放課後の廊下。部活等で残る生徒はいるが、それでもこの周辺の教室で
使われていないのか人気は全く感じられない。
精々外から聞こえる運動系の部活をしている生徒の声しかしない廊下の陰から
一人の少女がにじみ出るかのように現れる。

『…よし。出る前にも確認したが、誰もいないな。』

少女の名は朧。彼女は今、気属変換を使い、別の場所から陰を伝って移動をしてきたのだ。
彼女はそのまま廊下を歩きながら考えを張り巡らせる。

(しかし…いささか、妙な噂の流れだ。いったいどうなっている?)

彼女は先ほどまで学園内での噂の流れを調べていたのだが、どういうわけか集まるのは
こちらのグループに関係するものが多かった。
対抗戦の情報が封鎖されていたことはまだわからなくはない。こちらには一年しかおらず
先輩方にも悪い意味で目を付けられていたのだから。
だが、円環世界や個人世界を始めとしたいくつかの噂には個人情報に関わる物があるため
違和感を感じていた。

(…ここ最近の事もある。いずれにせよ、警戒を多重にしておいた方がいいだろうな)

そう改めて警戒することを決め、廊下の角を曲がると、どんっと何かがぶつかった衝撃と
軽い悲鳴が聞こえてきた。どうやら、考えに没頭していたことと角が死角になっていた
向こうから来た誰かに気づけずぶつかってしまったらしい。

『む…すまない。少し、考え事をしていて気づけなかった。大丈…夫…か…?』

『あ、いえ。こちらも不注意ですみません。…って、あれ?』

ぶつかってしまったのなら謝罪をしなくてはと思い、ぶつかった相手を確認して言葉を紡ぐ
しかし、それも驚きで途切れ途切れとなる。驚くのも無理はない。なぜなら、ぶつかった相手は…

『こ、コジューローさん…!?』

幼馴染の片割れの親にして、朧が幼少の頃から顔を合わせていた人なのだから。
驚きで固まった朧を前に、少女は彼女に対して口を開く

『……………あの、私は確かにコジューローですがどちら様ですか?初対面だと思いますが…』

『は!?…あの、いったい何を言って……』

いきなりの発言にさらに混乱する。当然だろう、いるはずのない人物がこの場にいることもだが
自分の事を知っているはずなのに知らないと言われたのだから

『あぁ、もしかして身近な人の同位体に会うのは初めてですか?それなら勘違いしちゃうのも』
『無理はないですね』

『同位体…っ そういう事か…!』

そう言われ、朧ははっと気づく。別世界に全く同じ姿をした人間がいると言われる同位体現象。
多くの世界から人材が集まるこの学園において、常に起きていてもおかしくはない事なのだろう。
実際、グループの中にも何人かあったという話もある。

『た、大変失礼しました!知り合いと似ていたのでつい…』

『いえいえ、気にしないでください。私も、同じような経験があるので気持ちはわかりますよ』

混乱しながらも勘違いしたことを謝罪する。向こうは気にするなと言っているが
それでも、初めての事態に落ち着くのは後になるだろう

『…そうですね。とりあえず、今はこれで別れましょうか。あなたも落ち着く時間が欲しいでしょうし』
『私は〇-○年生なので、落ち着いたら会いに来てください』

『は、はい!わかりました!』

『いい返事です。それでは、また会いましょう。朧』

そうしてコジューローは朧の横を通り、その先へ去っていく。それと同時に、朧の緊張も解け
その場で息を吐く

『はぁ…ある程度覚悟していたとはいえ、思わぬところで出会うとなると、やはり混乱するな。』
『拙者も、まだまだ修行が足りん。……ん?』

そこでふと、違和感に気づいた彼女はバッと振り向き、去っていくコジューローの背を見つめる

『…なぜ、あの人は名乗っていないというのに、拙者の名を知っていたんだ?』








『………うまく、ごまかせましたかね?』
見つめられながら去っていく中、冷や汗をかきながら少女が呟いた。








それからしばらく、この違和感を信じて両親や幼馴染、幼馴染の片割れの親である詩乃に
確認を取るべきか悩む朧の姿があったそうな。

このページへのコメント

これはコジューロー先輩あとでシノン先生からお説教ですね

Posted by スピネル 2017年06月13日(火) 20:17:07

執筆乙です。
・・・実際、”私は貴方の知ってる人とは別の同位体ですよ”
って言い訳に便利そうね。
あまり知り合いに会いたく無い所で遭遇してしまった時のすっとぼけとか。

Posted by キリィ 2017年06月11日(日) 08:35:36

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます