無神世界アルディラ、そこは全世界で最もルールが厳しい世界の1つ。他世界では普通に使われることのあるTS薬や成長薬。それらですらこの世界では医者といった特定の職の者や使用理由を役所に提出し許可された者のみしか所持、使用が出来ないほどである。
特に厳しいのが入界と出界といわれている。
まず世界間列車の駅の場所が特異な場所にある。そこは無神世界アルディラの中にあるのではなくその少し外側に存在しているのだ。
駅で数時間にもなる検査を受けて許可された者のみが本当に無神世界へと入れるという仕組みになっている。
このような仕組みになっているのは外界からの危険物を侵入させるのを防ぐだけでなく他世界の思想や倫理感の侵入を防ぐという面もあるからだと言われている。

さて、許可を得た者たちが無神世界で最初に足を踏むことになってる場所がある。
そこは駅から直通で繋がっている無神世界で唯一の場所。言わば駅の入り口となっている場所ということだ。その場所は活気溢れている場所だと皆は思うだろう。その考えは大きく間違っている。何故なら……








その場所の名は【南極】だからである。


「ふぇ、ふぇ……ぶぇっくしょん!!
駅を抜けたら雪国どころか吹雪の真っ最中!すぎて驚きが隠せないのだけれど!
予想通りのことだったけれど、嫌になるわ、こんちくしょーめ!!!」

防寒具を身にまとい、喚いている少女が南極にいる。彼女の名前はライム。無神世界出身である神賽学園1年夏休みということで故郷へと帰省してきたのである。
「……喚いていても全然体は暖まらないわね。はぁ、このまま外にいても凍死しそうだわ。いえ、するわね。
こっから長距離転移門を使うお金ないし……今こっちは夏だし、ここはヒッチハイクしかないわね!ヒッチハイクするのは車じゃなくて犬ゾリだけれど!!」

「そんなことしてたら魂だけ孤児院へととんでっちゃうよ。」

「やーね、冗談よ。ここは地道にバイトしてすぐにお金貯めて移転扉を使わせてもらうわ。
ところでなんで私が孤児院に行くって……ってあら?」ライムは後ろから声をかけられ声の主へと体を向ける。
そこにいたのは彼女の友達にして共に孤児院で過ごした家族の1人。

「やっほ、ライムちゃん。迎えにきたよ」

「久しぶりね、ナナちゃん!!遠いのに迎えにきてくれるだなんて思わなかったわ。」

「院長に言われてね。あの子のことだから、ここから孤児院に戻る方法なんて考えてないだろうって。
本当にそうだったみたいだね。まったくもう、計画はちゃんと立てなきゃダメだよ」

「あはは……ちょーっとお医者さんに行ってたりしてね。それでお金全部使っちゃったのよ。あ、全然命に関わるようなことではなかったのよ。
ただ、加護が喪われてたみたいで体力とか諸々も落ちちゃったみたいなの。」

「……何があったか後でじっくり聞かせてもらう。いや、今すぐ聞かせて。」

「え、えっと…………取り敢えず並びましょ!ね!!」ライムはそう言って走って逃げる。
 自分は何も悪いことはしてなかったものの、ナナの眼光の強さに怯んでしまう。彼女はライムが怪我とかするとひどく心配してくる。それをライムは未だに慣れないでいる。8年間ずっと一緒にいたけれどもだ。

「それで話逸らしたつもりならまったく逸らせてないよ、ライムちゃん。早く並ぶというのには同意するけどさ。」ナナは仕方ないなぁとため息をつき、ライムに追いつけるよう走り出す。

 2人は長距離転移門の使用を待つ人々の列へと並びながら、他愛もない話を語りあい、笑い合い、共にいることができなかった数ヶ月を埋めるかのようにじゃれあった。



 孤児院の院長室で男が1人、仕事をしている。彼の名はペテルギウス・ロマネコンティ。この孤児院の院長であり、組織「レゼル・ディアブロ」のメンバーの1人である。
彼は今、孤児院の事務処理に追われているのであった。

「ンッンー。実に実に実に実にぃ脳が震えるぅううう!!
勤勉なるワタシにこのような試練をあたえてくれルだなんテ!!これはカミがワタシが怠惰であらぬよう試練を与えてくれたに違いないのデス!!
このお導きに報いなければ疾くに早急に、ワタシの全身全霊全力全開をもってシテ!!そうっ!この孤児院にいる子ども達が幸福でいるためにも!!愛するあの子とナンの憂いもなく再会するためにも!!
ワタシはこの試練を超えなければならないのデスッ!!」カキカキカキカキカキカキ

約1時間の後、ペテルギウスは無事事務処理を終え即座に時計に目をやる。
「終わりマシタ。今回のタイムはななな、なんとぉ!1時間5分32秒!!また目標タイムを切ることはできなかった!!ああなんて愚かなことカ!!
慢心!怠慢!!すなわち怠惰がワタシのうちにあったからに違いないのデス。次は次こそ次次次次次次次次次ィこそはっベストタイムを更新するのデスッ!!」ペテルギウスは頭を掻き毟りながらそこまで一呼吸で言いのけ、席を立つ。
「ふぅ、喉が渇きましネ。コーヒーをいれることにシマショウ。
それにしても、ふむ。孤児院の消失デスか。」
コーヒーをコップに注ぎながら、少し前にきた組織からの連絡を思い出す。

孤児院の消失事件。この世界ではまだ数件しか起きてない。それだけなら別にここまで重要視されていなかっただろう。
しかし、その【組織が経営支援を行なっている孤児院】であるということが組織からの危険度を上げる原因となっている。
その際にローブを被った人物の出入りも確認されているとのこと。
こうも組織の息がかかっている孤児院ばかり狙われるとなると……。
「これは組織への挑発行為デスかね。それとも……もしや。もしやもしやもしやもしや。【アレ】を知られている?」
(いや、そんなはずはない。コレを知っているのは組織の最上位幹部とワタシだけのはず。)
ペテルギウス無意識に常に首にかけている中央部に小さく光る黒い玉が埋め込まれている十字架を握りしめながら呟やいた。

(ソウ。そんなバカなことあるはずがない。……アルコバレーノの1つ。『怠惰の黒腕』が孤児院に存在するだなんて知られているワケがないのデス)

ペテルギウスは『怠惰の黒腕』の守り人である。守り人の任を最上位幹部に言い渡されると同時に前線から引き、孤児院で働き始めたのだ。

(……もしもの時は覚悟決めないといけないとデスネ。
未来のためにも。ワタシがワタシであるためにもデス。そして子どもたちのためにも。)

ペテルギウスがコーヒーを口にしようとしたその時、バーン!と院長室の扉が開かれる。
「な、何事……って顔に顔にコーヒーがぁああああ!!!熱い熱い熱い熱いアッツゥーイィ!?」ゴロゴロ

「ただいま、院長先生!お久しぶりね!!
あら、転げ回るほど再会が嬉しかったのかしら。」

「怠惰ぁああ!!アナタ怠惰デスよ、ライム!
前にも言いましたデスね!部屋に入る時はノックしなさいデス!!」

「心が浮き足立っちゃってするの忘れてたわ」しれっとライムは言い放つ。
そこに反省の色が見えずペテルギウスは金切り声を出した。

「怠惰、怠惰、怠惰デスッ!その慢心こそがその忘却こそがまさしく怠惰の証!!
再会した際にやさしーく抱擁しようとかいう考えが今!まさに!吹き飛んだのデス!!
いいでしょう。いいでしょうとも。アナタが未だ勤勉でないのはワタシの怠惰が起こしたコト。
すなわち!!これから教育のお時間なのデス!!」

「嫌よ。わたしこれからみんなとお喋りする予定なんだから。早く話しに行きたいから逃げるわね!」そう言うやいなやライムは脱兎のごとき速さで部屋を出て逃げ出した。

「ワタシから逃げ切れると思っているのデスか!
ボックスウェポン『十輪咲き』起動デスッ!」ダッ

ペテルギウスが右手に嵌めてあった指輪がキラリと光ったかと思うと彼の背中からぞるりと無数の腕が現れ、ライムを追いかけ始める。
「うわ!?そんな道具まで使ってほんっとうに大人気ないのだわ!久しぶりに会えた可愛い可愛い娘にこんな仕打ちをしようだなんて。
少しは笑って見逃しなさいよ、この悪人面のおかっぱ頭!!」
 言葉とは裏腹に口調は楽しげで顔には笑みがこぼれている。数ヶ月ぶりの院長との追いかけっこ。ひょいひょいと長く伸ばされた黒腕を躱しながらライムは走る。走る。院内を走り続ける。
「あー!ライムお姉ちゃんだ!!帰ってきてたんだ!!」
「ん?あ、ホントだ。ってまた院長先生に追いかけられてるや。」

その様子に何事かと院のみんなも集まって、院長から逃げているライムの姿に気付き始めた。
「ええ!ええ!!帰ってきたわ。帰ってきたの。こんにちは、エリーちゃん!こんにちは、ケンくん!
夏の間だけだけれどもまたよろしくね!
だけどお喋りするのはまた後でね。見ての通り院長先生に追いかけられてるから」
そう早口で言いのける。
院を駆けずり回りながらみんなに挨拶し。私が帰ってきたわ。と走り回ってみんなに知らせて回った。
孤児院を一周したころにペテルギウスに見事捕まり1時間にも渡る説教を受けることになるのだが今のライムはそのことを知らなかったのである。






悔いのないように。いつまでもはっきりと覚えれるように。私は私の故郷で懸命に、楽しく暮らそう。
出ていかなければならないこの夏の終わりまでずっとみんなと一緒に………。


キャラ紹介やアイテム紹介とか施設紹介とか

ライム
アストルフォのグループメンバーにしてこの断章の主役
学園で色々成長したけどもまだまだ子どもである。身長とか
だけど大人なところももちろんある。お胸についてる2つの肉まんとか

ナナ・エルオント
ライムと同い年の女の子。ハッピーエンド至上主義。
物静かで滅多に怒ることはない丁寧な人柄をしている。
孤児院を出た後はレゼル・ディアブロに参加することになっている。
両親は物心つく前に事故で死亡し祖父に引き取られて育つ。
しかし、6歳の頃から祖父が狂ってしまい虐待を受けるようになる。
9歳の頃に保護されトルシュ孤児院に来た。
ライムのことが大好き。
院を出た後はレゼル・ディアブロに所属することになっている。
現在、冒険者ランクでいうと銅ランクの実力者。まだまだ成長途中
しかし体はぺたーんですとーん。まな板で止まってる。

ペテルギウス・ロマネコンティ
トルシュ孤児院の院長にしてレゼル・ディアブロのメンバーの1人。
「怠惰の黒腕」の守り人でもある。
理性的で丁寧な物腰である人格者である反面、激情家でもあり感情の上がり下がりが激しい人物である。
他人の前では大人しめ。親しくなるほどその烈火のごとき変人の言動が現れるようになる。
モットーは『勤勉』。怠惰は許しませんよ!
子どもたちを愛しており、実親の代わりに愛をしっかり与えようと頑張っている。そのためか子どもたちからも信頼され愛されている人物。
孤児院の教員たちからはもうちょっとテンション下げろよと言われてるとかなんとか。
戦闘任務に出ていた頃は『ヘカントケイル』という異名を持っていた。これは「B.W.十輪咲」を10個同時使用による100の腕による戦闘がが有名だったからである。
実力は冒険者で言えば星クラスの実力者。


B.W.「怠惰の黒腕」
レゼル・ディアブロが保管しているアルコバレーノの1つ。
待機状態は黒い玉の形をしている。
起動することで人体を易々と引きちぎる膂力を持つ不可視の『手』を最大で千本まで生み出し自在に操れるようになる。
その見えざる手は因果すらも掴むことが可能で、弱い因果であれば握りつぶしてなかったことにすることもできる。
使用中は精神と生命力がすごい勢いで削られ、戦闘終了時には廃人となっているか狂人となるか。
はたまた、戦闘終了まで持たず死ぬか。
この道具の使用者の末路の多くはこの3つのどれかである。
そして、この道具で削られた生命力・精神は決して回復することはない。

B.W.「十輪咲」
起動中、伸縮自在の黒い腕を使用者の背中に生み出すボックスウェポン。
最大10本まで腕を出すことができる。
しかしその腕の操作は使用者が全てしなければならないため出した腕の数だけ操作は困難になる。
腕の力は使用者の腕力の半分となる。

トルシュ孤児院
ライムが育った孤児院。フランスに存在する。

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