むかしむかし、あるところに小さな男の子がいました。
この子は自分がいつ生まれ、なんのために生きているのかもわからず、深く悩んでいました。
ただ、わかっているのは、心に鳴り響くどうしようもない飢餓感、あるいは覚えのない使命感でした。

「ああ、なぜだかわからない。どうしようもなく心が虚しい。
 それでいて、僕は何かをなさなければならなかったはずだった。」

その飢餓感、使命感を埋めるため、男の子はまず最初に森を食べ、次には湖を飲み干し、また次には山を貪り、そして最後には国一つを呑み込みました。
そうしていれば、多くの人々に責められ戦い、遂には捕らえられ固く封印されてしまいました。


それから、数千年がたちました。
封印されていた男の子はふとした拍子に封印が解かれ自由の身になりました。
それからは世界中を巡って多くを見て、多くを学び、多くを食べてきました。
そんな暮らしを幾星霜、遂に男の子は自分の生まれた理由となすべき使命を思い出し、同時に世界への失望を深めました。

「ああ、なんて簡単な話だったのだろうか。
 ああ、そうだ。我が本当になしうること、世界を救うという使命、相違なく理解したとも。」

こうして、一人の小さな男の子は世界を正すために最悪の魔王となったのです。


魔王となった男の子は時間を掛けて密かに数多の世界を蝕み病ませ、自分の肉として混ぜ合わせました。
そうして、朽ちた世界の残骸にて君臨し世界を救うとして暴虐の限りを尽くしました。
しかし、そんな栄華も長くは続きません。邪悪な魔王を打倒すべく勇者が立ち上がったのです。
そうして、幾度もの戦いの末、勇者は魔王を滅ぼし世界を救いました。
勇者はその後、千年に渡り讃えられ神々の列に迎え入れられたといいます。



   文庫出版 世界童話集1
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    年1月10日 第3刷発行
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【内容説明】
この書物は   文庫では過去一度も出版されたことのないものです。
世界童話集1は現在、世界にこの一冊のみを確認しています。その他シリーズの確認はされていません。
この書物に書かれている内容の半数は、現在どの世界でも確認されていない物語です。
この書物が発見されたのは        日にある魔術師による召喚実験の際に出現したものです。
その実験では魔獣は召喚されませんでした。

この未知なる書物には一時的に禁書指定を定めます。


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世界童話集1の『星喰い虫、あるいは千年魔獣』のページに挟まれていた文章
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彼の魔王は数多の世界を侵し蝕む星喰い虫。
彼の魔王は数多の命を混ぜた不死の龍。
彼の魔王は数多の策謀為す狡猾なる災害。

彼の魔王を討ち滅ぼすは伝説に謳われる勇者の光。

ああ、なんとも呆気ない最期であったか。
しかし、侮るなかれ。彼の魔王は千年魔獣。
遍く世界に終末を望む人々の悪意。造られた星の神。
予言に曰く、世界を滅ぼす因子が一つたる赤黒の双頭竜。

過去か未来か、それとも彼方を隔てる壁の向こうか。
ただ、忘れることなかれ。千年魔獣の眼はまた開かれる。


この時の鎖を断ち切れる者が現れることを、私は永遠に待とう。

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