自室の前につくと、まず軽く聞き耳を立てて部屋の様子をうかがう。そして誰もいないことを確認してから少しだけドアを開けて、中をのぞく。
古ぼけた衣装棚、シーツのついていないベッド、そして机や木箱の上に無造作に置いてある写真立を確認してからようやく部屋に入り、鍵を閉める。

 「…ハァー。」

 ため息を一つ。ついた理由といえば今日のあまりにも濃密すぎる出来事に他ならない
神賽学園。この世界において多くの冒険者とやらを育成する場所。
そして、元の世界に帰る手がかりを見つけられるかもしれない場所…

「とはいえ、あれは流石に騒がしすぎるんだが…」

頭を抱えつつ、机に向かう。引き出しの中から古ぼけたノートブックを出し、新しいページを開く。
ペンを手に取り、今日の出来事を書き始める。

 入学式会場に到着してから見聞きしたものといえば、今まで見たこともない大量の人間。
始まる入学式。妙なホログラム(あれも魔法の一種か?)で股間を隠した全裸男。
いきなり叫び出す入学生(思わず顔を背けてしまった)
うー!とだけ言って壇上から降りた女(あれで巫女だというのだから驚きだ)
妙に自分を下に見る女(まぁそれまでに比べたらましな方だが)

後は…コマエダという教皇。
教皇という時点で自分はあまり好感を持てないがあれは輪にかけて駄目だろう。
上手く表現できないが、確実に頭がイっている。
取りあえず希望教の人間には近づかないようにしよう。

後は…あの珍妙な先生紹介か。ラインハルトとかいう金髪の男。
最初は天文学的理論で生まれた十つ子かはたまたクローンかと思ったが、あれも魔術の一種らしい。ファンタジーってやつは相変わらず恐ろしいものだ。
…途中に見えた両生類と人間のバイオモンスターは私のカメラの故障かなにかだろう。
近くにいた生徒はは現実だといっていたが、きっと故障だ。…そうだといいんだが

「とにかく、騒がしすぎる」

 私が元いた世界では、人間は絶滅しかかっていた。百年ほど前に落とされたという核と、それによって滅んだ世界がもたらす沢山の要因によって。
争い、騙し、裏切って、飢え、斬られ、撃たれ、そして喰われて、少なくなった人間たちは毎日殺し合っていた。
あんな風に過ごしているところは、ほとんど見たことがなかった。

 傍から眺める分には問題ない。むしろ、そういった光景はとても良いものだと考える。しかし、巻き込まれるのは本意ではない。コミュニケーションは苦手だ。面倒くさい。
一々口に出す言葉を思考しなければいけない上に、下手なことを言えば相手の地雷を踏みかねない。考えることでエネルギーが減る。稼働時間が短くなる。そして面倒くさい。

「後は…グループか」

10人〜500人で作られる集団。大手グループに入るのがセオリーだとペンギンは言っていたが、目に見えて上下関係が予想されるので、入学式で席を立って目立っていた少女のいる1年生だけのグループ用紙にサッとサインをしてきた。…最低限だという10人構成の小グループになってくれればいいのだが。

「…これで全部か?」

 普段と違って大分長くなってしまった。おかげでただでさえ少なかったエネルギー残量は今にも底をつきそうだ。恐らく100%充電が完了するのは明日の昼過ぎになってしまうだろう。ああ、カメラのチェックもしなければ。…壊れていますように

「…グッドナイト、ファーザー」

ベッドの上で横になり、充電器を首筋にさして、スリープモードに移行する。明日はどうなることやら…ごく僅かだが、期待している部分を感じて顔をしかめながら、私は意識を落とした。

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