この戦争が始まって、もう何百年経つのだろうか。
世界の秩序は既に消え失せ、多くの生物が死に絶えた。
かつての縛られた世界に比べればマシだと、そう叫ぶ者がいる。
以前のような世界の方が幸福だったと、そう叫ぶ者がいる。
相容れない二つの考え。けして分かり合おうとしない両者は、互いに互いを滅ぼし合うまで争い合うのだろう。
今日もまた世界のそこかしこで人々が争っている。

『馬鹿ばっかりだねー』

その世界の中央に聳え立つ塔、その最上階から世界を見下ろす1人の少女。その見た目にそぐわない蠱惑的な雰囲気を醸し出している。

『なんで誰も疑問に思わないんだろう。世界が何かに縛られている?そんなわけないじゃん』
『異世界からの文化の流入が争いの原因?どんだけカルチャーショック受けてるの?ウケるー』

備え付けられたテーブルの上に座り、足をじたばたとさせ笑い声を上げる。

『まぁ、私がそういう風に操作したんだけどね!あはははははは─』
『───ふぅ、独り言は虚しいから反応していいんだよ?』

彼女が背後に目を向けると、そこには一人の男

「いや、失礼。大層機嫌が良さそうだったのでな。声を掛けるのも憚られた」

眼鏡をかけ、薄い笑みを浮かべた男だ。

『おじさん、いっつも思うんだけどどうやってここに入ってきてるの?こんな幼気な少女の部屋に不法侵入とかロリコン??』

「幼気?笑わせるなよ、蛇神。このアンドロメダで生贄を貪るだけの貴様から最も程遠い言葉だろう」

『ひどーい!!』

「事実だろう。やはり貴様は我々人類の敵だ。持てる力を持って殺さねばなぁ」

互いに軽口を叩き合う。が、
男のその言葉を聞いた瞬間、少女の気配が変わる。

『へぇ』

放たれる殺気。己を殺す、目の前の男は恐れ多くもそう言ってのけたのだ。
許せない、許せない。私を殺す?この蛇神、地母神を?女神の嫉妬によって怪物に変えられたこの身を殺すと言ったのか?
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない

「・・・・・・・・・」

しかし、男はその殺気を受けてもピクリとも反応しない。
それを見た少女は、

『──ふぅ、まぁ、いっか。あなたの大好きな光の英雄ですら私を殺しえない。それは何があっても変わらない事実』
『魔人であっても、神には届くわけないんだから。取るに足らない戯言だと思ってあげるよ』

そう言いながら心底呆れたというような目を向ける。既に先程の殺気は四散していた。

「その慢心が足元を掬うだろうさ。あの男は必ず君を殺す」
「仮に万が一、億が一失敗しても、代わりはいる。光の後継は既に、な」

喜色満面。まるで、憧れの英雄に思いを馳せる子供のように。

『私なんかよりも貴方の方がよっぽど悪じゃない?』

「新たな光を作り出すことの何が悪いというのか。私がしているのは、世界を救うための手段だよ」

この男は何ともなしにそう言う。そこに一切の罪悪感も忌避感もない。本当に、言ったままを信じているのだ。

『・・・あっそ。分かったから出ていってよー。私も暇じゃないんだからさー!!』

少女はその言葉を聞くと興味が失せたとばかりにそっぽを向き、退室を促す。

「ああ、楽しみにしておけ蛇神。■■■■■が君を殺すその時をな」

その言葉とともに男は完全に姿を消した。

『あーもう!楽しい気分が台無しだよ!なんで殺人予告!いや正確には殺神予告?まあそんなことはどうでもいい重要な事じゃない!!』
『ホンットに腹立つー!私は神様だよ?この世界で一番偉いのに!!』

少女はうがー!と唸り声を上げる。

『まあいいや。どんなやつが来たって、私が負けるわけがない。その全てを石に変えて、縛り付けてあげるの』
『それが蛇神メドゥーサ、私なんだから』

怒りが収まったのかふふ、とほほ笑みを浮かべる。
そして少女はまた自分が縛り付けた哀れな世界を見守るのであった。

──その世界に未だに救いは訪れない。
魔人たちは神を殺しえない。今は、まだ。

『カミングスーン、神だけに。早くしないと間に合わないかもね?』

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