対峙した瞬間、一瞬呼吸を忘れてしまった。
あくまでも自然体であるというのに、その身から感じる気配は、こちらの首を刎ねようとする、殺気に近い何か。

「……………っ」
久しく感じることのなかった、対峙した相手 への恐怖。
敵にこちらの生命を握られているという錯覚。

『さて、あの娘の友人を名乗るのですから多少はやれるのでしょう?』
『どこからでもかかって来なさい』

それは、聞くものからすれば傲慢、驕りにほかならない。が、今この状況においてはそれだけの明確な差が存在している。
ならば、

「はぁっ!」

持てる力の全てを持って、目の前の女将を斬り捨てる。元より、この身に出来るのはただそれだけ。
刀を引き抜き横薙ぎに切り払う。

『甘いですよ』

が、それは彼女の鞘であっさりと受け止められ

『一振りで終わりにする、たしかにそれが理想でしょう。しかし、純然たる実力差のある相手に対してそれは、隙を生み出すだけです』
『だから、貴方は今死にました』

「がッッッ!?」

受け止めた勢いのまま回転した彼女によって道場の壁に向かって蹴り飛ばされ、叩きつけられる。

「げふっ!」
『復帰が遅い。これで二度死にました』

攻撃の手は止まない。彼女が番えた矢が、己が肉体に突き刺さる。

『そして三度目でs』

「ぐぅっ!あぁ!!」キィン

距離を詰められ、振り下ろされようとした刀を腕を刀へと変化させることで受け止める。

「燃えろォ!!!」

炎の剣を発動し、腕から炎を放つ。

『なるほど、肉体を武器に変異させますか』
『ですが、大道芸なら見飽きていますよ』

受け止めていた刀に万力がかかる。その身体のどこにそれだけの力が秘められているというのか。

バキィッ

「いっっ!?ぐっ」

腕を、刀へと変異していた腕をへし折られる。

『男子が情けない声を上げるものではありませんよ。これで、三回目ですね』

折られた腕を強引に捕まれ、道場の床に放り投げられる。

『ふぅ、少し期待していたのですが、この程度でしょうか』

ボロボロで転がっている自分と比べ、涼やかな顔でそう呟く女。

『鈍では何も斬ることは出来ませんよ?今の貴方では、ね』
『大人しく、鞘に収まっているのがいいと思います。』

おそらくこちらを馬鹿にする意図はなく、純粋な善意なんだろう。そこに悪意は一切ない。が、だからこそ。

ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!

「舐めるなよ、この程度で終わるものか。僕は、俺は!」
「かならず、成し遂げなきゃならない…!それを、こんなところで折れてられないんだよ!」バチッ

不思議な感覚だ。
自分の周りを紫電が舞う。その腕から炎が上がる。
目の前の存在を斬れと、胸の奥から声が聞こえる。

「ぉぉぉおおおおおおお!」

思考が切り替わる。これは、かつて一度だけ感じたことのある──

「刃の理、ここにあり…!」

折れた腕が少しずつ刃へとその形を戻していく。そして、その刃に纏う属性は妖。

『…………ほぅ』

「三世…、村正ァ!」

身体から溢れるドロドロとした想いが妖気へと変わり、相手を襲う。

『ふふ、ただ人だと思っていたのですが、何やら面白いモノをお持ちのようで』
『ですが、選択を間違えましたね。』

その顔に少しだけ不快さを顕にする。
そして、彼女はその身に魔力を迸らせる。

『諸共に消し飛ばしましょう』

彼女の雰囲気が変わる。そして放たれるのは退魔の一撃。

『牛王招雷・天網恢々!!』

「えっ、ちょっなにそぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

蒼紫は文字通り消し炭になった。



オマケ

『ふぅ。ついついやりすぎてしまいました。こんなことではあの娘に怒られてしまいます』

困ったような顔で頬に手をあて、気絶した蒼紫を膝枕する。

『それにしても、あの力…。それに村正という名前…』
『なにやら、随分と困った子を友人にしたものですね…』

そうすることが当たり前のように頭を撫でながら

『後で旦那様にも教えておきましょうか。仮にあの村正であるならば、この子は…』

その後目覚めた蒼紫が色々とひどい目にあうがここでは割愛しておこう。

このページへのコメント

断章お疲れ様でした!朧の母親、頼光さんを使っていただきありがとうございます!
模擬戦とはいえ容赦ねぇ…とはいえまだ加減ができるだけましではあるけど。ぼこぼこにされたけれども何かの力を発現!
これで対抗できるか…と思いきや、頼光さんに対してそれはアウトですね。やっぱり不快感現わしながら退魔の意味も含めて宝具ぶつけられましたか。
しかし村正…厄ネタですよねぇ…そして最後の蒼紫さんダイーン!

Posted by 朧 2017年07月17日(月) 20:30:03

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